収蔵品案内

江戸時代
絹本著色 一枚 縦125.4cm 横63.8cm 

縄武像の治政

池田治政(1750~1818)は、宝暦14年(1764)から寛政6年(1794)まで、30年の長きにわたり岡山藩主を務めました。好んで書いた大きい文字や、寛政の改革を行った松平定信をおそれぬ振る舞いをしたことから、豪胆な性格で知られています。また一方では、朱子学を好みたびたび藩学校や閑谷学校に臨席したり、財政難から維持管理費に困窮した岡山後楽園に芝生を植え再生させ、茶室「茂松庵」でしばしば茶会を催すなど、学問と茶道を修めた文化的な大名としても評価されています。

本作品は池田治政の肖像画で、右をむいて描かれています。隠居し出家した後の治政の姿を描いたものですが、太い眉毛を怒らせ、大きな目を開いて空中を見据える姿は、藩主を退いてもなお衰えない覇気を感じさせます。従来良く知られている治政の肖像画は、池田家歴代の肖像画をまとめた「縄武像」(当館所蔵)のように左を向いて描かれており、本作品とは向きが反対になっています。

本作品は表具されておらず、メクリの状態で伝わっていることに加え、本作品を包んでいる和紙には墨書で「顕国院様御像不宜御分 御不用」と記されていることから、肖像画として不採用になったものであることがわかります。迫力のありすぎる容貌が、採用を見送らせる一因になったのでしょうか。しかし「縄武像」に行儀よく描かれる治政像よりも、こちらの作品の方が、豪気でならした治政の真の姿を伝えてくれているようにも思えます。

本作品は、平成20年12月7日(日)から平成21年1月25日(日)まで開催する、企画展「数寄大名 池田治政」で初公開されます。

(林原美術館学芸員 浅利 尚民)