収蔵品案内

江戸時代
紙本著色 縦 164.8cm 横376.0cm

重文「アジア航海図」

坤輿万国全図屏風とは、西暦1602年に、イタリア人宣教師のマテオ・リッチ(1552~1610)が中国国内で刊行した世界地図が、江戸時代初期には日本に持ち込まれ、六曲一隻の屏風に仕立てられ彩色されたものです。地球が球体であるという説を元に作成され、中国を中心に描かれた本図は、当時の最先端の科学でもありました。
日本列島も本州、四国、九州と特徴をとらえて描かれいるますが、北海道の位置に北陸道があるなど正確ではありません。岡山周辺には「備前中後」と記され、山陰地方の北側の海域には「日本海」との記述もみられます。

鎖国を行っていた当時の日本において、海の外に広がる大きな世界を知る知識の典拠となりました。本作品は岡山藩主池田家に伝来したもので、描かれた絵図や彩色の表現、緻密に記された文字などから、江戸時代前期~中期ころの作と考えられます。

当館では世界図を描いた作品として、ポルトガル製ポルトラーノ型海図の原本を手本として我が国で製作され、朱印船貿易で用いられたアジア航海図(重要文化財)も所蔵しています。東は日本、西はアラビア、北は中国・ロシア、南はジャワに至るまで、羊皮紙上に著色で描かれており、蝦夷(えぞ)が描かれていないことや地名の注記などから、桃山時代の作品と考えられます。こちらも坤輿万国全図屏風と同様に、池田家に伝来しました。

近世の世界観をうかがい知ることができるこれらの作品のうち、坤輿万国図屏風は、平成23年4月3日(日)から5月29日(日)まで当館で開催する企画展「はなやかな屏風」で、約17年ぶりに展示する予定です。

(林原美術館 浅利 尚民)